かつての「ビッグ3」の一角が崩れ落ちた――。
2025年11月、自動車業界に激震が走りました。ホンダの下期世界販売台数が、なんと国内メーカーの中で「4位」に転落する見通しとなったのです。トヨタはもちろん、長年のライバルである日産、さらには「軽自動車の王者」スズキにも抜かれるという異常事態。
「世界のホンダ」がなぜここまで苦戦しているのか? その背景には、単なる「部品不足」では片付けられない、根深い構造変化がありました。今回は、この衝撃的なニュースを具体的な数字と事例で読み解いていきます。
「2位→4位」の悪夢。数字が語る真実
まず、事の重大さを数字で確認しましょう。
これまで日本の自動車メーカーの世界販売ランキングといえば、不動の1位がトヨタ。そして2位と3位をホンダと日産が激しく争う、というのが常識でした。しかし、直近のデータ(2025年度下期見通しなど)が示す現実は残酷です。
- トヨタ自動車(ダントツの首位)
- スズキ / 日産自動車(ここがホンダを逆転)
- ホンダ(まさかの4位へ後退)
日経新聞などの報道や金融情報の掲示板でも話題沸騰となっているこの「4位転落」。原因として真っ先に挙げられているのが「半導体不足」です。しかし、半導体不足は全メーカー共通の悩みのはず。なぜ、ホンダだけがこれほど痛手を負ったのでしょうか?
なぜホンダだけ? 半導体ショックの正体
「半導体なんて、どの車も一緒でしょ?」
そう思われるかもしれませんが、実は事情が少し複雑です。ホンダが特に苦戦している理由は、主力市場である北米(アメリカ・メキシコ)での生産停止が響いています。
例えば、メキシコのセラヤ工場。ここは北米向けの主力車種を作っていますが、ここが半導体不足で「無期限の稼働停止」に追い込まれるなど、深刻な打撃を受けました。ホンダの車は高度な電子制御を行っている分、特定の種類の半導体が一つでも欠けると、車を一台も作れないのです。
他社が代替品の調達や設計変更でしぶとく生産を続ける中、ホンダのサプライチェーン(部品の供給網)の脆さが露呈してしまった形です。
中国市場での「大失速」が追い打ち
泣きっ面に蜂とはこのことです。生産ができないだけでなく、「売る場所」でも異変が起きています。
ホンダのドル箱市場であった中国での販売が、ガタガタと崩れ落ちています。2025年7〜9月期の決算資料を見ると、中国での販売台数は前年比で約29%減という衝撃的な数字が出ています。
理由は明確。「中国製電気自動車(EV)の爆発的な普及」です。
安くて高性能な中国メーカーのEVに押され、ガソリン車や従来のハイブリッド車を得意とするホンダ車が選ばれなくなっているのです。これはホンダだけでなく日産やトヨタも苦しんでいますが、ホンダの落ち込み幅は特に深刻です。
スズキの「大躍進」という皮肉
ホンダが苦しむ横で、なぜスズキが上位に食い込んできたのでしょうか?
答えは「インド」にあります。スズキはインド市場で圧倒的なシェア(約4割)を持っており、インドの経済成長とともに販売台数を伸ばしています。
また、スズキの車は比較的シンプルな構造のものが多く、高度で高価な半導体を大量に使わなくても作れる車種が多いため、部品不足の影響をホンダほど受けなかったという側面もあります。
「高機能・高性能」を追い求めたホンダが足踏みし、「シンプル・新興国密着」のスズキが追い抜く。時代の変化を感じずにはいられません。
EV戦略の「後退」とこれからのホンダ
この苦境を受け、ホンダは大きな決断を下しました。
これまで掲げていた「2030年までに世界販売の30%をEVにする」という目標を、「20%」へと下方修正したのです(2025年11月発表)。
「EV一本足打法」から、現実的な路線への変更。これはある意味で正しい判断かもしれませんが、投資家やファンからは「ホンダの先進性が失われたのではないか」という不安の声も上がっています。
ホンダは復活できるのか?
「日本車4位」という現実は、ホンダにとって屈辱以外の何物でもありません。しかし、ホンダには世界中のファンを熱狂させてきた「技術屋魂」があります。
半導体の調達網をどう立て直すのか。
中国市場の穴をどこで埋めるのか。
そして、EVシフトの荒波をどう乗り越えるのか。
かつてF1で世界を制したエンジンのホンダ。この「4位転落」を底値として、V字回復を見せてくれることを、私たち日本のファンは願ってやみません。今は、じっと耐えて次の「ホンダらしさ」を見せる準備期間だと信じたいところです。
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