ガソリン価格が下がったにもかかわらず、灯油価格が高止まりする現象。
これは多くの消費者が疑問に思う点です。 「ガソリンスタンドが値下げを忘れている」わけではありません。
そこには「在庫のタイムラグ」と「税制改正の影響」という、明確な理由が存在します。
最新の税制と流通の仕組みをもとに、その背景を具体的に解説します。
在庫入れ替えの速度差
一つの要因は、ガソリンスタンドの地下タンクにある「在庫」です。
ガソリンと灯油では、売れるスピードが全く異なります。
ガソリンは毎日大量に売れます。 都市部のスタンドであれば、地下タンクのガソリンは数日で空になり、新しい価格(税率廃止後の価格)で仕入れたガソリンが補充されます。
一方、灯油はガソリンほど回転が速くありません。 特に暖房需要が本格化する直前や、少し暖かい日が続いた場合、タンクの中には「高い時期に仕入れた灯油」が長く残ります。
スタンド側は、高い仕入れ値の灯油を安く売れば赤字になります。 そのため、タンクの中身が入れ替わるまで、店頭価格を下げることができません。
冬の需要期という特殊事情
モノの値段は「需要と供給」で決まります。 12月は灯油が一年で最も売れる時期です。 資源エネルギー庁の石油製品需給統計を見ても、12月の灯油販売量は夏の10倍近くに跳ね上がります。
ガソリンは競合店との価格競争が激しく、1円でも高いと客が逃げます。 看板価格でお客を呼び込む必要があるため、店側は利益を削ってでも早く値下げします。
対して灯油は「生活必需品」であり、寒ければ高くても買わざるを得ません。 需要がピークにある時期は、店側も無理に価格を下げる動機が弱くなります。 「高くても売れる時期」には価格が下がりにくい、という商売の原則が働いています。
原油価格と円安の二重苦
価格の根本にあるのは「原油価格」と「為替レート」です。 日本は原油のほぼ100%を輸入に頼っています。
- ドバイ原油などの国際価格
- ドル円の為替レート
仮に国際的な原油価格が下がっても、円安が進めば、日本に届く原油の調達コストは下がりません。
昨今の市場では、原油相場と円安の「綱引き」により、仕入れコスト自体は劇的には下がっていません。 その中でガソリンだけが下がったように見えるのは、次の税制変更が大きく関係しています。
暫定税率の廃止と軽油の特例
現在の価格差を生んでいる最大の要因は、2025年12月31日をもって廃止されたガソリン税の暫定税率です。
これまでガソリンには、本来の税率に加えてリッター約25円の「暫定税率(当分の間税率)」が上乗せされていました。これが廃止されたことで、ガソリンの店頭価格は年明けから大きく引き下げられました。
一方で、以下の2点はガソリンとは異なる動きをしています。
- 軽油(ディーゼル) 物流への影響を考慮し、軽油引取税の暫定税率は4月まで維持されることになりました。そのため、ガソリンのような急激な値下げは起きていません。
- 灯油 灯油にはもともとガソリンのような「暫定税率」の上乗せがありません(石油石炭税のみ)。そのため、「税率廃止による25円の値下げ」という恩恵自体が灯油には発生しません。
つまり、「ガソリンだけが税制改正で特別に安くなった」のであり、灯油が不当に高いわけではありません。この税制の非対称性が、両者の価格差(乖離)を際立たせています。
灯油特有の配送コスト
灯油価格を考える上で外せないのが「配送コスト」です。
店頭で買う場合と、自宅に配送してもらう場合では価格が違います。
昨今は人手不足により、配送ドライバーの人件費が高騰しています。
また、配送トラック自体の燃料費もかかります。
ガソリン価格が下がったとしても、この「物流費」の部分が値上がりしています。
灯油価格の内訳には、原油代だけでなく、こうした人件費や維持費が含まれます。
ベースとなる経費が上がっているため、原油が多少下がっても、最終的な小売価格が下がりにくい状況が固定化しています。
値下げは「忘れている」わけではない
灯油が下がらない理由は、以下の3点に集約されます。
- 税制の違い:ガソリン税の暫定税率は廃止されたが、灯油にはその恩恵がない。
- 在庫回転の遅れ:高い時期に仕入れた灯油がまだタンクに残っている。
- 経費の上昇:配送に使うトラックの燃料費(軽油)や人件費が下がっていない。
ガソリンスタンドが値下げを忘れているわけではありません。 税制の変更によりガソリン価格のステージが変わった一方で、灯油は従来のコスト構造のまま推移しているのが実情です。
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