衝撃的なニュースが飛び込んできました。本日(2025年5月17日)の日経新聞によると、日産自動車が神奈川県にある追浜工場と日産車体の湘南工場の削減を検討しているとのことです。これは、日産にとってまさに「聖域なき構造改革」の一環であり、経営立て直しへの並々ならぬ覚悟が伺えます。
この記事を受けて、「これから日産はどうなっていくのか?」と不安に思われる方も多いのではないでしょうか。今回は、報道内容を紐解きながら、日産の現状と今後の展望について考えてみたいと思います。

報道された衝撃的な内容:主力工場削減の背景
まず、日経新聞で報じられた主な内容は以下の通りです。
- 国内主力工場の削減検討: 国内5工場あるうち、主力工場である追浜工場(神奈川県横須賀市)と日産車体の湘南工場(同県平塚市)の休止または閉鎖を検討。
- 創業の地からの撤退も: これら2工場が閉鎖されれば、日産の創業地である神奈川県から完成車工場がなくなる可能性が出てきます。
- グローバルな工場再編: 世界の完成車工場を17カ所から10カ所に削減する計画の一環。インド、アルゼンチン、南アフリカからの撤退、メキシコの2工場閉鎖も検討。
- 深刻な業績不振: 2025年3月期の最終損益は6708億円の赤字と、過去3番目の赤字幅を記録。米国の関税政策も大きな打撃となっています。
- 構造改革の加速: 世界での従業員9000人削減、生産能力2割減に加え、さらに1万人超の追加人員削減と国内工場の削減に踏み込む決断。
- コスト削減と黒字化目標: 2027年3月期までに2025年3月期比で5000億円のコスト削減を目指し、自動車事業の黒字化を掲げています。工場稼働率も2028年3月期までに100%(中国を除く)へ引き上げる目標です。
追浜工場は1961年に操業を開始し、かつては世界初の量産型EV「リーフ」を生産するなど、日産の歴史を象徴する工場の一つです。その主力工場にまでメスを入れるということは、日産が直面している経営状況の厳しさを物語っています。
日産の狙いと直面するであろう課題
この大胆な工場削減策から、日産の狙いと、今後直面するであろう課題が見えてきます。
日産の狙い:
- 徹底的なコスト削減: 固定費の大部分を占める生産体制を見直すことで、大幅なコスト削減を実現し、収益構造を抜本的に改善する。
- 生産効率の最大化: 工場を集約し、稼働率を極限まで高めることで、無駄を徹底的に排除する。記事にもある通り、工場稼働率を70%(2025年3月期)から100%(2028年3月期、中国除く)へ引き上げる目標は、この狙いを明確に示しています。
- EV戦略への集中と転換: リーフの生産を追浜工場から栃木工場へ移管し、栃木工場をEV生産の重要拠点として強化する動きは、EVへのシフトを加速させる戦略の一環と考えられます。限られた経営資源を、今後の成長が見込めるEV分野へ集中投下していく意図が伺えます。
- 経営再建への強い意志表示: 「聖域なき改革」を断行することで、金融市場や株主、そして従業員に対して、経営再建への本気度を示す狙いもあるでしょう。
直面するであろう課題:
- 雇用への影響: 国内の主力工場削減は、従業員の雇用に大きな影響を与える可能性があります。配置転換や再就職支援など、丁寧な対応が求められます。
- 地域経済への打撃: 工場閉鎖となれば、関連企業や地元経済への影響は避けられません。サプライチェーンの見直しも必要となるでしょう。
- 従業員の士気低下と人材流出: 大規模なリストラは、残る従業員の士気を低下させ、優秀な人材の流出を招くリスクも伴います。
- ブランドイメージへの影響: 「創業の地から工場がなくなる」といった事態は、日産のブランドイメージにも影響を与える可能性があります。
- 「選択と集中」が吉と出るか: 経営資源をEVなどに集中する戦略は、市場の動向や技術革新のスピードを見誤ると、かえって経営を悪化させるリスクもはらんでいます。

今後の日産はどうなる?未来への展望
今回の報道は、日産がまさに「背水の陣」で経営再建に臨んでいることを示しています。今後の日産の行方を、短期的な視点と中長期的な視点から考えてみましょう。
短期的展望(~1、2年):痛みを伴う改革の実行期
- リストラの断行: 発表された工場削減や人員削減が具体的に進められます。これに伴い、一時的な関連費用が発生する可能性もあります。
- 市場の厳しい評価: 改革の成果がすぐには現れにくいため、株価や販売台数など、市場からの評価は引き続き厳しい状況が続くかもしれません。
- 社内外の混乱: 大規模な組織再編は、社内に混乱を生む可能性があります。また、サプライヤーや地域社会との調整も重要な課題となります。
中長期的展望(3年~):再生か、さらなる苦境か
- 筋肉質な経営体質への転換: コスト削減と生産効率化が進み、計画通りに工場稼働率が向上すれば、収益性は大きく改善されるでしょう。「稼ぐ力」を取り戻せるかが最初の関門です。
- EV戦略の成否: 栃木工場を中心としたEV生産体制が軌道に乗り、市場競争力のある新型EVを継続的に投入できるかが、今後の成長の鍵を握ります。グローバル市場でのEV競争は激化しており、ここで優位性を築けるかが極めて重要です。
- グローバル戦略の再構築: 撤退する市場と、注力する市場(例えば北米や中国など)のメリハリをつけ、限られた資源を効果的に配分できるかが問われます。
- アライアンス(ルノー・三菱自動車)との連携: 厳しい経営環境を乗り切るためには、ルノーや三菱自動車とのアライアンスを最大限に活用し、開発コストの削減やプラットフォーム共有などを進めることが不可欠です。連携の深化が、日産の競争力を左右するでしょう。
- 「選択と集中」の先にあるもの: もし今回の「選択と集中」が成功すれば、日産はよりスリムで効率的な企業として再生し、再び成長軌道に乗る可能性があります。しかし、改革が思うように進まない、あるいは市場環境が想定以上に悪化するなどの場合は、さらなる厳しい状況に追い込まれる可能性も否定できません。
茨の道を進む日産の覚悟と未来
日産が発表した国内主力工場の削減検討は、非常に痛みを伴う厳しい決断です。しかしこれは、同社が生き残りをかけて、過去のしがらみを断ち切り、新たな時代へ適応しようとする強い意志の表れとも言えるでしょう。
「エスピノーサ社長が決算発表の場で、再建計画について『非常に悲しく痛みを伴う困難な決定だった』と述べた」という記事の記述からも、経営陣の苦渋の胸の内が察せられます。
この改革が成功し、日産が再び力強い輝きを取り戻すことができるのか。それとも、さらなる困難に直面するのか。今はまだその道のりは不透明ですが、一つ確かなことは、日産が極めて重要な岐路に立たされているということです。
私たち消費者は、そして自動車産業に関わる全ての人々が、今後の日産の動向を固唾を飲んで見守っていくことになるでしょう。日産の「選択と集中」が未来を切り開く一助となることを願わずにはいられません。
皆さんは、今後の日産についてどのようにお考えになりますか?
