市場が震撼するニュースが飛び込んできました。中国の自動車大手BYDが、2025年10月29日から開催される「ジャパンモビリティショー2025」で、軽EVのプロトタイプを世界初公開すると発表したのです。これは単なる新型車ではありません。日本の独自規格、すなわち全長3.4m以下、全幅1.48m以下、排気量660cc以下という「ガラパゴス」市場に、海外メーカーが本気で挑む号砲です。これまで海外勢が参入をためらってきた聖域に、BYDは日本専用設計モデルで切り込みます。
絶対王者ホンダN-BOXへの対峙
迎え撃つのは、日本の絶対王者、ホンダN-BOXです。長年、国内販売台数トップに君臨するこの車は、軽自動車の完成形とも言えます。全長3,395mm、全幅1,475mm、全高1,790mm(FF)という規格ギリギリのボディに広大な室内空間を実現。価格も約165万円から247万円超までと幅広く、あらゆる層の支持を集めています。成功のもう一つの柱が、先進安全運転支援システム「Honda SENSING」です。衝突軽減ブレーキや渋滞追従機能付きACCなど最大18の機能を統合し、「安心」という価値を提供しています。
価格破壊と性能
BYDの最大の武器は、価格です。現在、日産サクラなどの軽EVは約257万円からですが、国のCEV補助金(最大58万円)を使えば、実質購入価格は約200万円台前半になります。もしBYDが戦略的な価格設定で車両本体を220万円で投入すれば、補助金適用後の実質価格は約162万円。これはN-BOXの最安モデル(約165万円)を下回ります。史上初めて、EVがガソリン車のベストセラーより安くなる「価格逆転」が起こる可能性があるのです。
性能面でもEVは有利です。N-BOXのエンジンが最高出力58馬力(43kW)なのに対し、BYDの軽EVはサクラなどを参考にすると、トルクでガソリン車を圧倒する約195Nmに達すると予測されます。静かで力強い加速は、一度体験すると戻れない魅力となるでしょう。
維持費の逆転劇
購入後もEVの優位性は続きます。ガソリン代と電気代を比較すると、その差は歴然です。全国平均レギュラーガソリン価格(1Lあたり約174.5円)とN-BOXの燃費(WLTCモード21.6km/L)で計算すると、100km走行するのに約808円かかります。一方、EVは一般的な家庭用電力(1kWhあたり約36円)で充電した場合、100km走行コストは約446円です。年間1万km走れば、約36,200円もの差額が生まれます。これは特に、走行距離が伸びる商用利用において絶大なコスト削減効果を発揮します。
信頼への挑戦
それでも多くの人が抱くのが、「中国メーカーは信頼できるのか?」という不安です。BYDはこの心理的な壁を、手厚い保証で乗り越えようとしています。EVの心臓部である高電圧部品に「8年間または走行距離15万km」、バッテリー容量に「8年または15万kmで初期容量の70%以上」という長期保証を標準付帯。これは製品への自信の表れであり、消費者の不安を直接的に解消する戦略です。さらに、全国にディーラー網を拡充し、アフターサービス体制の構築も急ピッチで進めています。
市場が変わる日
BYDの軽EV参入は、日本の自動車市場における「パーフェクトストーム」となり得ます。規制への完全適合、EVならではの優れた走行性能、そしてガソリン車を凌駕する可能性のある経済性。この3つの要素が組み合わさることで、軽自動車市場の勢力図が塗り替えられるかもしれません。実質200万円を切るEVが当たり前になる時代は、もう目前に迫っています。





