時速30キロが新常識に。2026年、生活道路のルールが激変する

2026年9月1日から、私たちの身近な「生活道路」の交通ルールが根本から変わります。この改正の核心は、自動車の速度と人の命の間に存在する、科学的に証明された冷徹な関係性です。

時速30キロが生死を分ける

自動車と歩行者の衝突事故では、速度が時速30キロを超えると致死率が急激に跳ね上がります 。警察庁のデータによれば、衝突速度が時速20~30キロの場合の致死率は0.9%ですが、時速30キロを超えると3.0%に上昇し、かつての法定速度に近い時速50~60キロでは17%にまで達します 。実に、歩行中・自転車乗用中の死者の48%が、自宅からわずか500m以内で事故に遭っているという衝撃的な事実もあります 。年間7万件もの事故が起きる生活道路の安全確保は、もはや待ったなしの課題なのです 。

新ルールの要点

施行日: 2026年9月1日です 。

対象道路: 「中央線(センターライン)や車両通行帯のない一般道路」です 。これまで速度標識がなければ時速60キロまで許されていましたが、これが時速30キロに引き下げられます 。

最重要ルール: 道路に「40」などの速度標識が設置されている場合は、その標識の速度が常に優先されます 。今回の改正は、標識がない道路の「初期設定」が変わるものと理解してください。

違反の代償と罰則

新しいルールを軽視すれば、厳しい罰則が待っています。最も重いのは、時速30キロ以上の速度超過です。例えば、時速30キロ制限の道路を、かつての法定速度である時速60キロで走行した場合、違反点数は一気に6点。これは過去に違反歴がなくとも、一発で30日間の免許停止処分(一発免停)の対象となります。

わずかな速度超過も許されません。14キロまでの超過でも違反点数1点、反則金9,000円が科されます。また、速度を守っていても、安全確認を怠れば「安全運転義務違反」(2点、9,000円)に問われる可能性もあります。

世界の常識

この法改正は、世界の交通安全の潮流に沿ったものです。ロンドンでは都心部を時速約32キロ(20マイル)に制限した結果、死亡事故が約25%減少し、特に歩行者との衝突事故は63%も激減しました 。フランスのパリでも市内を原則時速30キロとし、市民の59%がこれを支持しています 。速度規制は、安全で静かな生活環境を守るための世界標準なのです。

ドライバーがすべきこと

警察は、狭い道でも取り締まりが可能な「可搬式速度違反自動取締装置(移動オービス)」の活用を徹底する方針です。 「パトカーがいないから大丈夫」という考えは、もはや通用しません。

ドライバーは今すぐ、「標識なければ60キロ」という古い常識を捨て、「センターラインなければ30キロ」という新しい常識を体に刻む必要があります。常に速度計を確認し、子どもの飛び出しなどを予測した慎重な運転を心がけてください。アクセル操作一つが、地域社会の安全を左右するのです。

あなたとクルマ編集部
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