「この中古車ください!」と契約書にサインしたものの、「やっぱり、やめたい…」。そんな経験、誰にでもあるかもしれません。しかし、いざ販売店に「クー-リング・オフをお願いします」と伝えても、「できません」と、きっぱり断られてしまうのが現実です。
これは販売店が意地悪をしているわけではありません。実は、法律ではっきりと決められていることなのです。今回は、なぜ自動車の契約はキャンセルが難しいのか、そして、それでも「どうしても」という時にどうすれば良いのかを、分かりやすく解説します。
なぜ?クルマはクーリング・オフできない
結論から言いますと、自動車の購入はクーリング・オフ制度の対象外です 。これは法律(特定商取引法)ではっきりと定められています 。
そもそもクーリング・オフとは、訪問販売や電話勧誘など、不意打ちで契約してしまった消費者を守るための特別な制度です 。冷静に考え直す時間を与えるのが目的です 。
しかし、自動車の購入は違います。消費者が自らの意思でお店に出向き、たくさんの車を見比べ、じっくり考えてから契約するのが一般的です 。このような計画的な買い物は「頭を冷やす」必要性が低いと判断されるため、クーリング・オフの対象にはならないのです 。これは新車でも中古車でも同じです 。
でも諦めないで!キャンセルへの道
クーリング・オフが使えなくても、キャンセルできる可能性はゼロではありません。重要なのは「契約が法的に成立しているか」という点です。
契約書にサインや捺印をする前であれば、まだ契約は成立していません。この段階なら「申込みの撤回」として、キャンセルが可能です 。ただし、販売店がすでに車庫証明の申請などを進めていた場合、その手続きにかかった費用(実費)は支払う必要があります 。
もし契約が成立してしまっていたら、残念ながら一方的にやめることはできません 。しかし、販売店との「話し合い」によって、お互いが納得の上で契約を解消する「合意解約」という道が残されています 。大切なのは、キャンセルしたいと思ったら、1日でも1時間でも早く販売店に連絡することです 。
「キャンセル料」その金額、本当に妥当?
販売店が合意解約に応じてくれる場合、ほぼ間違いなく「キャンセル料」を請求されます。
このキャンセル料は、単なる罰金ではありません。契約がなくなったことで販売店が被った「実際の損害」を埋め合わせるためのお金です 。例えば、すでに行った納車整備の費用や、名義変更の手数料、人件費などがこれにあたります 。
ここで知っておきたいのが、「消費者契約法」という法律の存在です。この法律は、事業者が請求できる損害賠償額の上限を定めており、「平均的な損害の額を超える」法外なキャンセル料の請求を無効にすることができます 。
もし販売店から「キャンセル料は車両価格の10%です」などと高額な請求をされても、すぐに支払ってはいけません。まずは「請求の根拠となる費用の内訳を、書面で見せてください」と、はっきりと要求しましょう 。
こんな時はキャンセルできる!
ご自身の都合ではなく、販売店側に問題があった場合は、契約を取り消せる可能性があります。
- 重大な事実を隠されていた場合 事故で骨格部分を修理した「修復歴車」であることや、水没した過去があることを隠して「無事故車です」と偽りの説明をされた場合、契約を取り消せる可能性があります 。
- 未成年者が契約した場合 2022年4月1日から、成年年齢は18歳になりました。18歳未満の方が親の同意を得ずに結んだ契約は、後から取り消すことができます 。
困ったら一人で悩まない!相談窓口はこちら
販売店との話し合いがこじれてしまったら、一人で抱え込まずに専門機関に相談しましょう。無料でアドバイスをもらえたり、解決の手助けをしてくれたりします。
- 川口市消費生活センター 川口市にお住まいの方の身近な相談窓口です。専門の相談員が、解決に向けた助言や、場合によっては販売店との間に入って交渉の手伝い(あっせん)をしてくれます 。
- 電話番号: 048-258-1241
- 受付時間: 月~金曜日 9:30~16:00 (12:00~13:00除く)
- 場所: 川口市役所第一本庁舎2階
- 埼玉県消費生活支援センター 市の窓口が閉まっている土曜日も相談を受け付けています 。
- 電話番号: 048-261-0999
- 受付時間: 月~土曜日 9:00~16:00
- 場所: 川口市上青木3-12-18 (SKIPシティ内)
- 消費者ホットライン「188」 どこに相談すればよいか分からない時は、局番なしの「188(いやや!)」に電話してください 。お近くの相談窓口を案内してくれます。
自動車の契約は、人生における大きな決断の一つです。契約書にサインする重みを理解し、慎重に行動することが、後悔のないカーライフへの第一歩です。

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