お孫さんへのプレゼント、素敵ですね。ただ、電動キックボードには、命に関わる大切なルールがあります。特に埼玉県内で公道を走るためには、絶対に守らなければならないことがあります。分かりやすく、大事な点から順番に解説します。
まずは絶対のルール:お孫さんはまだ乗れません
16歳未満の運転は法律で禁止されています
最も重要なことからお伝えします。お孫さんは中学生とのことですので、残念ながら、その電動キックボードを公道で運転することはできません。
2023年7月1日に新しくなった法律では、電動キックボードの中でも「特定小型原動機付自転車」という種類に限り、16歳以上であれば運転免許がなくても乗れるようになりました。しかし、裏を返せば16歳未満の人が運転することは、固く禁止されています 5。これは全国どこでも、もちろん埼玉県内でも同じです。公園の私有地などを除き、少しの距離でも公道を走ることは違法行為となります。
知らなかったでは済まない「提供者」の罰則
さらに知っておいていただきたいのは、運転した本人だけでなく、16歳未満と知っていて電動キックボードを渡した大人も罰せられる可能性がある、ということです。貸したり、あげたりする行為がこれにあたります。
もし16歳未満の人が運転して検挙された場合、運転者本人には最高で「6ヶ月以下の懲役または10万円以下の罰金」が科される可能性があります。そして、車両を提供した大人にも、同じく「6ヶ月以下の懲役または10万円以下の罰金」が科される場合があります。お孫さんを守るためにも、ご自身の身を守るためにも、16歳の誕生日を迎えるまでは、公道で絶対に乗らせないようにしてください。
16歳になったら:乗るための必須準備
お孫さんが16歳になったら、いよいよ公道を走れるようになります。しかし、その前に必ず済ませなければならない準備が2つあります。
そのキックボードは公道を走れるタイプですか?
まず、プレゼントされた電動キックボードが、公道を走るための基準を満たしているか確認が必要です。免許なしで乗れる「特定小型原動機付自転車」には、厳しい条件があります。
- 最高速度: 20 km/h 以下であること
- 大きさ: 長さ190 cm以下、幅60 cm以下であること
- モーターの力: 定格出力が 0.6kW以下であること
- 重要部品: 最高速度表示灯、ウインカー、ブレーキランプなどが付いていること
もし一つでもこの基準を満たさない場合、その乗り物は原付バイクと同じ扱いになり、運転免許が必要になります。免許なしで乗れば「無免許運転」となり、最高で「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」という非常に重い罪に問われます。安全な製品の目印として、車体に「性能等確認済シール」が貼られているか確認しましょう。
準備1:ナンバープレートの取得
特定小型原動機付自転車は、お住まいの市区町村の役所で手続きをして、必ずナンバープレートを取り付けなければなりません。これは、その車両が誰のものであるかを明確にし、責任の所在をはっきりさせるためです。
準備2:自賠責保険への加入
自動車やバイクと同じように、必ず自賠責保険(共済)に加入しなければなりません。これは、万が一、他人にケガをさせてしまった場合の被害者を救済するための、社会的な責任です。保険に入らず運転すると、法律により「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」が科されます。
埼玉県の公道を走る:交通ルール早わかり
準備が整ったら、いよいよ公道デビューです。埼玉県内での基本的なルールをまとめました。
走る場所:車道が基本、歩道は例外中の例外
電動キックボードが走る場所は、原則として車道のいちばん左側です。自転車と同じ場所を走るとイメージしてください。
例外的に歩道を走れる場合がありますが、それには2つの条件を同時に満たす必要があります。
- 「自転車および歩行者等専用」の標識がある歩道であること。
- キックボードを最高速度6 km/hの「歩道走行モード」に切り替え、最高速度表示灯を点滅させていること。
このモードでも、歩道ではあくまで歩行者が絶対優先です。歩行者の邪魔になる場合は、一時停止しなければなりません。
| 項目 | 車道を走る時(原則) | 歩道を走る時(例外) |
| 走行モード | 通常モード(最高速度表示灯が点灯) | 特例モード(最高速度表示灯が点滅) |
| 最高速度 | 20 km/h | 6 km/h |
| 走行場所 | 車道の左端 | 「自転車・歩行者」標識のある歩道のみ |
| 優先順位 | 車の流れに従う | 歩行者が絶対優先。道を譲るか停止する。 |
曲がり方:右折は必ず「二段階右折」
交差点での右折は、バイクのように小回りしてはいけません。どんなに小さな交差点でも、必ず**「二段階右折」**をする必要があります 5。
- 右のウインカーを出し、青信号で交差点の向こう側までまっすぐ進みます。
- 渡った先で向きを右に変え、ウインカーを消して待ちます。
- 前方の信号が青になったら、まっすぐ進みます。
大きな交差点では危険も伴うため、一度キックボードから降りて、エンジンを切り、歩行者として横断歩道を渡るのが最も安全です。
絶対にダメ!な危険行為
以下の行為は、重大な事故につながるため、厳しく禁止されています。
- 飲酒運転: バイクや車と全く同じです。発覚すれば免許取り消しに相当する重い処分と罰則(酒酔い運転で最高5年以下の懲役など)が待っています。
- 二人乗り: 定員は1名です。絶対に二人乗りをしてはいけません。
- スマホのながら運転: スマートフォンを操作しながらの運転は禁止です。
法律以上に大切なこと:自分の身を守る意識
最後に、ルール以上に大切な安全への心構えです。
ヘルメットは命綱
特定小型原動機付自転車のヘルメット着用は、法律上「努力義務」とされており、罰則はありません。しかし、電動キックボードは転びやすく、体を守るものが何もありません。警察庁や埼玉県も着用を強く推奨しています。お孫さんの命を守るため、ヘルメットは必ずかぶるように約束してください。
電動キックボードは手軽で楽しい乗り物ですが、一歩間違えれば重大な事故につながる「車両」です。ルールを正しく理解し、安全に楽しむことが何よりも大切です。お孫さんが16歳になるまで、これらのルールを一緒に学び、安全な乗り手になるための準備期間としてください。





