2024年9月、埼玉県川口市で起きた悲惨な交通死亡事故。この事故に対する判決が、2025年9月19日にさいたま地方裁判所で言い渡されました。
飲酒運転、一方通行の道を時速125kmで逆走という、あまりにも危険な運転の末に51歳の男性の命を奪った当時18歳の男に下されたのは、懲役9年の実刑判決でした。
この一つの事件と判決から、私たちは何を学び、どう行動すべきなのでしょうか。具体的な事実を一つひとつ確認しながら、考えていきたいと思います。
■事故のあらまし:何が起きたのか
まずは、事故がどのような状況で起きたのかを具体的に見ていきましょう。
- いつ: 2024年9月29日
- どこで: 埼玉県川口市中町の、制限速度30kmの一方通行の市道
- だれが: 当時18歳だった中国籍の男
- どのように: 焼酎のロックを3杯飲んだ後、乗用車を運転。一方通行の道を、制限速度を90km以上も超える時速約125kmで逆走しました。
- 結果: 交差点で、会社役員の縫谷茂さん(当時51歳)が運転する車と正面から衝突し、縫谷さんを死亡させました。
飲酒、大幅なスピード違反、そして逆走。これだけ危険な行為が重なれば、重大な事故につながることは誰にでも想像がつきます。しかし、加害者の男は裁判で「いつもと同じように難なくまっすぐ運転できていた」と述べたのです。
■裁判の焦点:「危険運転」か、ただの「不注意」か
今回の裁判で一番の焦点となったのは、この事故が「危険運転致死罪」にあたるかどうかでした。ここで、少し言葉の解説をします。
車の運転で死亡事故を起こした場合、主に二つの罪が考えられます。
- 過失運転致死罪(かしつうんてんちしざい)これは、不注意(過失)によって事故を起こし、相手を死亡させてしまった場合に適用される罪です。例えば「脇見をしていて、信号を見落とした」といったケースです。刑罰は、7年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金です。
- 危険運転致死罪(きけんうんてんちしざい)こちらは、アルコールや薬物の影響、制御できないほどの高スピードなど、極めて危険な状態で故意に車を走らせ、結果として相手を死亡させた場合に適用されます。悪質性が高いため、刑罰も重く、1年以上の有期懲役(最高で20年)となります。
弁護側は「運転の制御はできていた」と主張し、より刑の軽い「過失運転致死罪」が妥当だと訴えました。
しかし、裁判所は検察側の主張を認めました。時速125kmという速度は、明らかに「その進行を制御することが困難な高速度」であると判断し、「危険運転致死罪」の成立を認定したのです。
この事故で亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに、私たちはこの悲しい出来事を決して忘れず、日々の運転に活かしていかなければなりません。





